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【問題】
【難易度】★★★☆☆(やや易しい)
\[
\begin{eqnarray}
\end{eqnarray}
\]
次の各文章の\( \ \boxed { 8\strut } \ \)~\( \ \boxed { 10\strut } \ \)の中に入れるべき最も適切な字句等をそれぞれの解答群から選び、その記号を答えよ。
また、\( \boxed { \! \boxed {\mathrm {A} \vphantom{10^d}} \! \boxed {\mathrm {a.bc} \times 10^d} \! } \)~\( \ \boxed { \! \boxed {\mathrm {D}\mathstrut \ } \! \boxed {\mathrm {a.bc}\mathstrut \ } \! } \ \)に当てはまる数値を計算し、その結果を答えよ。ただし、解答は解答すべき数値の最小位の一つ下の位で四捨五入すること。
(1) 水あるいは水蒸気の状態変化に関して、次に示す各条件における諸量の計算を行う。なお、水あるいは水蒸気の状態量を用いる計算には、表\( \mathrm {1}\)及び表\( \mathrm {2}\)に示す値を用いること。
1) 圧力が\( \mathrm {0.1MPa}\)、温度が\( \mathrm {60℃}\)で、質量が\( \mathrm {1kg}\)の水を圧力一定の下で加熱したところ、乾き度が\( \mathrm {0.6}\)の湿り蒸気となった。このときに加えられた熱量は、\( \boxed { \! \boxed {\mathrm {A} \vphantom{10^d}} \! \boxed {\mathrm {a.bc} \times 10^d} \! } \)\( \mathrm {[kJ]}\)である。
2) 圧力が\( \mathrm {5MPa}\)で比エンタルピーが\( \mathrm {2\,700kJ/kg}\)の蒸気を絞り弁を用いて膨張させた場合、この弁の入り口と出口の\( \ \boxed { 8\strut } \ \)は等しくなる。出口の圧力が\( \mathrm {0.05MPa}\)になった時、その状態は\( \ \boxed { 9\strut } \ \)である。
3) 圧力が\( \mathrm {0.1MPa}\)で、質量が\( \mathrm {1kg}\)の水をポンプで加圧して\( \mathrm {5MPa}\)で温度が\( \mathrm {60℃}\)の圧縮水とし、それを加熱したところ\( \mathrm {5MPa}\)で\( \mathrm {360℃}\)の過熱蒸気となった。
ⅰ) \( \mathrm {60℃}\)の圧縮水が\( \mathrm {360℃}\)の過熱蒸気になるまでに加えられた熱量は、\( \boxed { \! \boxed {\mathrm {B} \vphantom{10^d}} \! \boxed {\mathrm {a.bc} \times 10^d} \! } \)\( \mathrm {[kJ]}\)である。
ⅱ) 生成された\( \mathrm {5MPa}\)、\( \mathrm {360℃}\)の水蒸気をタービンに供給したところ、タービン出口では圧力が\( \mathrm {0.05MPa}\)となり、湿り蒸気となっていた。このとき、温度は\( \ \boxed { \! \boxed {\mathrm {C}\mathstrut \ } \! \boxed {\mathrm {a.bc}\mathstrut \ } \! } \ \)\( \mathrm {[℃]}\)となる。またタービン内では水蒸気の変化が可逆断熱変化であるとすると\( \ \boxed { 10\strut } \ \)一定で動作することから、このときの乾き度は\( \ \boxed { \! \boxed {\mathrm {D}\mathstrut \ } \! \boxed {\mathrm {ab.c}\mathstrut \ } \! } \ \)\(\times10^{-1}\)となる。
<\( \ \boxed { 8\strut } \ \)及び\( \ \boxed { 10\strut } \ \)の解答群>
\[
\begin{eqnarray}
&ア& エンタルピー &イ& エントロピー &ウ& 圧力 \\[ 5pt ]
&ェ& 比体積 &オ& 圧縮水 &カ& 飽和水 \\[ 5pt ]
&キ& 過熱蒸気 &ク& 乾き飽和蒸気 &ケ& 湿り蒸気 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
\[
\text{表1 飽和蒸気表}
\]
\[
\text{表2 圧縮水及び過熱蒸気表}
\]
【ワンポイント解説】
水と水蒸気の状態変化に関する計算問題です。「水は今どういう状態か?どのように状態変化するのか?」などの内容を理解しなければ、歯が立たない問題と言えます。逆に状態変化などの意味合いを理解すれば、解ける問題となります。前問である(1)の内容も前提知識として必要となりますので、組み合わせて学習していくようにしていきましょう。
1.汽力発電と\( {T-s } \)線図
火力発電の代表である汽力発電では、水から蒸気、蒸気から水への状態変化を繰り返し、サイクルします。その流れを汽力発電のフロー図と、温度とエントロピーの関係である\( {T-s } \)線図を辿って説明します。

\[
\Large \textbf{図1}
\]

\[
\Large \textbf{図2}
\]
図\( \mathrm {1}\)と図\( \mathrm {2}\)では、各部分を色分けして相関関係を表しています。各部分を照らし合わせながら、以下の説明文を読むと良いです。
\( \underline{\mathrm{➀→➁:給水ポンプ}} \)
復水器から水になり、給水ポンプで加圧されながら圧縮水としてボイラーに供給されます。この時、水温は上昇しますが、断熱変化となる為、エントロピーは変化しません。
\( \underline{\mathrm{➁→➂:ボイラ下部}} \)
給水ポンプから供給された水はボイラーで加熱されることで飽和水になります。この時は圧力が一定のまま顕熱が与えられる為、エントロピーは増加します(等圧変化)。
\( \underline{\mathrm{➂→➃:ボイラ上部}} \)
更に熱を与えることで水は蒸発し始め、湿り蒸気となります。この時は潜熱が与えられ、温度は変化しないまま蒸発し続けます(等温変化)。熱を与え続け、全ての水が蒸発すると、乾き飽和蒸気となります。乾き蒸気は水分が混ざっていない為、乾き度\( {1} \)と言えます。
\( \underline{\mathrm{➃→➄:過熱器}} \)
ボイラー上部を出た乾き蒸気は、過熱器を通る中で過熱蒸気になります。先程まで温度上昇が止まっていた蒸気は、温度上昇が再開し、密度の小さい過熱蒸気へと変わります。密度の大きい飽和蒸気のままだと、タービンの故障や効率の低下となる為、過熱蒸気にする必要があります。
\( \underline{\mathrm{➄→➅:タービン}} \)
過熱器で生成された過熱蒸気は、タービンへ供給されて回転させ、発電機を回転させて発電させます。その間に過熱蒸気は高乾き度の湿り蒸気となります。この時の蒸気は、高速でタービン入口から出口まで移動しながら仕事する為、エントロピーが変化しない断熱変化となります。
\( \underline{\mathrm{➅→➀:復水器}} \)
タービンで仕事を終えた湿り蒸気は復水器へ行きます。復水器内で冷却水に熱を逃がすことでエントロピーが減少し、飽和水になります。その後、給水ポンプに戻り、先程の動きを繰り返します。
2.エンタルピー:\( \Delta H \)とエントロピー:\( \Delta S \)の計算
エンタルピーとエントロピー、いずれも変化量を計算する際、出口と入口の差で求めます。
\( \underline{エンタルピー: \Delta H } \)
出口側のエンタルピー:\( H_{o} \)、入口側のエンタルピー:\( H_{i} \)
\[
\begin{eqnarray}
\Delta H &=& H_{o} – H_{i} \, \mathrm{ [kJ] }
\end{eqnarray}
\]
\( \underline{エントロピー: \Delta S } \)
出口側のエントロピー:\( S_{o} \)、入口側のエントロピー:\( S_{i} \)
\[
\begin{eqnarray}
\Delta S &=& S_{o} – S_{i} \, \mathrm{ [kJ/K] }
\end{eqnarray}
\]
なお、比エンタルピーと比エントロピーの変化量の計算時も、出口と入口の差で求めることができます。
【解答】
1) 解答
(A) \(1.52\times10^3\)
問題文と表 \(1、2\) より、
飽和液の比エンタルピー:\( h_{3} \)、乾き飽和蒸気の比エンタルピー:\( h_{4} \)、乾き度:\( x’\)、とし、湿り蒸気の比エンタルピー:\( h_{w} \)は、
\[
\begin{eqnarray}
h_{w} &=& h_{3} + x(h_{4} – h_{3}) \\[ 5pt ]
&=& 417.4 + 0.6 \times (2\,675.0 – 417.4) \\[ 5pt ]
&≒& 1\,772.0 \ \mathrm{[kJ/kg]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
湿り蒸気を求める問題ならこれで完了ですが、\( 60 ℃ \)地点から乾き度\( 0.6 \)の湿り蒸気になるまでに加えられた熱量を求める問題ですので、まだ続きます。
ワンポイント解説2の通り。\( 60 ℃ \)地点の圧縮水の比エンタルピー:\( h_{1} \)とし、この時の比エンタルピー:\( \Delta h \)は、
\[
\begin{eqnarray}
\Delta h &=& h_{w} – h_{1} \\[ 5pt ]
&=& 1\,772.0 – 251.2 \\[ 5pt ]
&=& 1\,520.8 \ \mathrm{[kJ/kg]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
質量: \( m \)とし、加えられた熱量:\( \mathrm \Delta {H}\)は、
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm \Delta {H} &=& h m \\[ 5pt ]
&=& 1\,520.8 \times 1 \\[ 5pt ]
&=& 1\,520.8 \ \mathrm{[kJ]} \\[ 5pt ]
&=& 1.520\,8\times 10^3 \ \mathrm{[kJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
よって、加えられた熱量は\( \mathrm {1.52\times 10^3 }\) \(\mathrm{[kJ]}\)となります。
2) 解答
(8) ア
題意より解答候補は、(ア)エンタルピー、(イ)エントロピー、(ウ)圧力、(エ)比体積、になると思います。
絞り弁の入り口と出口で圧力と体積は変化しても、エネルギーの消費をしていないことから、エンタルピーは等しくなります。
(9) キ
題意より解答候補は、(オ)圧縮水、(カ)飽和水、(キ)過熱蒸気、(ク) 乾き飽和蒸気、(ケ)湿り蒸気、になると思います。
圧力が\( \mathrm {0.05MPa}\)、比エンタルピーが\( \mathrm {2\,700kJ/kg}\)の条件を表\( 1 \)と照らし合わせると、乾き飽和蒸気の比エンタルピー\( \mathrm {2\,645.2kJ/kg}\)を上回っていることから、過熱蒸気の状態であることが分かります。
3) 解答
(B)\( \mathrm {2.84\times 10^3 }\)
ワンポイント解説2の通り、\( \mathrm {60℃}\)の圧縮水が\( \mathrm {360℃}\)の過熱蒸気になるまでに加えられた熱量を求めます。
表 \(1、2\) より、圧縮水の比エンタルピー:\( h’_{2} \)、過熱蒸気の比エンタルピー:\( h’_{4} \)とし、比エンタルピーの差:\( \Delta h’ \)は、
\[
\begin{eqnarray}
\Delta h’ &=& h’_{4} – h’_{2} \\[ 5pt ]
&=& 3\,096.6 – 255.3 \\[ 5pt ]
&=& 2\,841.3 \ \mathrm{[kJ/kg]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
質量: \( m \)とし、加えられた熱量:\( \mathrm \Delta {H’}\)は、
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm \Delta {H’} &=& \Delta h’ m \\[ 5pt ]
&=& 2\,841.3 \times 1 \\[ 5pt ]
&=& 2\,841.3 \ \mathrm{[kJ]} \\[ 5pt ]
&=& 2.841\,3\times 10^3 \ \mathrm{[kJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
よって、加えられた熱量は\( \mathrm {2.84\times 10^3 }\) \(\mathrm{[kJ]}\)となります。
(C)\( \mathrm {81.3[℃]}\)
圧力\( \mathrm {0.05 \, MPa}\)の条件に当てはまる蒸気の温度は、表\( \mathrm {1}\)より、\( \mathrm {81.32[℃]}\)が該当します。よって、\( \mathrm {81.3[℃]}\)となります。
(10) イ (D)8.31
可逆断熱変化を要約すると、可逆はタービン内で摩擦などの損失が無く、断熱は外に熱が逃げない上で水と水蒸気が\(\mathrm{100\%}\)状態変化する理想的な変化となります。このことから、熱量が拡散しないことからエントロピー一定となります。
その上で、
\( \mathrm {5MPa}\) \( \mathrm {360℃}\)の時のタービン入口比エントロピー:\( s_{i} \)、
\( \mathrm {0.05MPa}\) をタービン出口比エントロピー:\( s_{o} \)、この時の飽和液の比エントロピー:\( s_{1} \)、乾き飽和蒸気比エントロピー:\( s_{6} \)とし、
乾き度\( x’ \)は、
\[
\begin{eqnarray}
s_{i} &=& s_{o} \\[ 5pt ]
s_{i} &=& s_{1} + (s_{6} – s_{1})x’ \\[ 5pt ]
(s_{6} – s_{1})x’ &=& s_{i} -s_{1} \\[ 5pt ]
x’ &=& \dfrac { s_{i} -s_{1} } { s_{6} -s_{1} } \\[ 5pt ]
&=& \dfrac { 6.493\,4 – 1.091\,0 } { 7.593\,0 – 1.091\,0 } \\[ 5pt ]
&=& 0.830\,88 \\[ 5pt ]
&=& 8.308\,8 \times10^{-1} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
よって\(8.31\) \( \times10^{-1}\)となります。
実際は、タービン翼との摩擦やタービン冷却による熱損失は発生する為、エントロピー一定にはなりません。


